近視は、環境への適合である為、改善は非常に難しい。また、近視の発生や進行のメカニズムは
極めて複雑で単一のメカニズムでは説明できない。
多因子が複雑に絡み合っているうえに、個々の眼球に於ける多様性の多さが、
その解明を困難にしていると考えられている。
近視抑制を目的としたなんらかの介入を行うとすれば、近視が進行する小児期となる。
1.小児における眼の発達のメカニズム
通常、乳児時期は軽度の遠視である。その後、成長に伴い遠視の程度が小さくなり、小学校低学年前後でほぼ正視となる。これを「正視化現象」と呼ぶ。
正視化現象には、眼の屈折度に影響を及ぼす「眼軸長」、「角膜の屈折力」、「水晶体の屈折力」の変化が関与すると考えられている。論文によると、眼軸長は2歳頃までに急速に伸長し、その後伸長速度は徐々に減弱し10歳を超えるとほぼ一定となる。角膜の屈折力は、生後6か月にかけて急速に減少し、3~4歳を超えた頃からほぼ一定となる。
水晶体の屈折力は8歳頃まで減少傾向が続く。眼軸長の延長は近視を進行する方向に影響するのに対して、角膜や水晶体の屈折力の減少は近視を減弱する方向に影響する。つまり、正視化現象の過程は、成長に伴う眼軸長延長に伴う眼の屈折度の変化を、角膜や水晶体の屈折力の減少で代償していると考えることができる。正視化現象の後、通常は眼屈折度は正視付近で安定化する。
しかし、一部の学童では再び眼軸長の伸長が始まり、正視から近視へと移行する。しかしながら、この近視の進行も成人前に止まり近視が安定するのが通常であるが、成人になっても近視の進行が止まらない場合は、強度近視という病気である。
従って、近視の発症・進行への対策(介入)には、小学校入学前から実施する必要がある。
現在、世界的に認められている近視治療には以下がある。
- アトロピン(Atropine)点眼
- OK(Orthokeratology):オルソケラトロジー
- LASIK(Laser in situ keratomileusis):レーシック
- 野外活動(紫外線、紫可視光)
しかしながら、
- は、薬物であり副作用がある
- は、発達期にある眼球に対して意図的に形状変化を強いる治療である(成人への適応は、賛否両論である)
- は、身体を侵略する手術である
- は、屋外活動への現実的な制約がある
2.近視の抑制について
近視の進行は、近見視の負荷が大きく長期的にかかる事(調整力の破綻)によって、眼軸の長軸化が生じ、近視が進行する。従って、負荷を取れば良い事になるが、現実は学業などの理由でそうはいかない。身体に侵略的な事をせずに、且つ、副作用のある薬物を用いずに近視抑制するには、以下が有効である。
- 毛様体の過緊張を時々解放する
- 血流を良くする
- 知覚トレーニング(Perceptual Learning)
- 矯正を行う時には、医師の元で正しい矯正を実施する
- 紫外線(紫可視光)を適度に浴びる(小児のみ有効)
3.Refresh Technology EW に於ける、近視への有効性
1.に対する機序
近くを見る時には、毛様体筋が収縮し水晶体を厚くする、これが長く続くと、筋肉が凝ってしまい、いざ遠くを見るときに水晶体を薄くできなくなる。
これが過緊張(調節緊張)であり、この段階なら、眼を休める事や、点眼や、ストレッチでも治ることがあるが、安全ですぐ結果の出る方法として、電気刺激(通電治療)がある。
最初に過緊張解放分(調節緊張開放分)として裸眼視力が急に上がる。
しかしながら、近見視の負荷で裸眼視力は下がっていく。
従って、成人への適用の場合は、適宜施術する事が効果的である。
(これは、レーシック術後の視力戻り(低下)等にも有効である。)
また、眼軸が既に伸びはじめている場合にも、次第に裸眼視力が下がっていく。小児への適用は、眼軸の長軸化が始まる前から定期的に実施する事が最も抑制効果が高いと言える。
どちらの場合にも電気刺激によってその速度を抑制する事はある程度可能であるが、完全な抑制は不可能である。
一般的に電気刺激は毛様体を緊張させるが、Refresh Technology EW に於ける振幅(電流パラメータの1つ)を弱めにし、且つ、施術時間を短時間(5分~10分)にして実施すれば、その効果が、
過緊張の解放に作用する為、有効である。
当社にて、Refresh Technology EW の技術を適用した施術を、近視者200人程に実施したが、一様に施術初回に於ける高い裸眼視力向上と、その後の施術に於ける鈍化が、多く観察されている事からも、過緊張を解放する効果は高いと考える。
2.としての機序
Refresh Technology EW に於ける、血流改善効果については、眼疲労の項目を参照下さい。
3・4・5は、 Refresh Technology EW と相関性が無いが、参考までに解説します。
3.について
: PL(Perceptual Learning)は、多くの学者によって研究されていて、効果が高いとされる論文が多いが、画一的な方法は存在せず、今後の研究が期待される分野である。
4.について
: 正視眼にマイナスレンズ(通常の近視用眼鏡)を装着すると、無調節状態において平行光線束は網膜後方に焦点を結ぶことになり、これはちょうど遠視眼と同じ状況となる。この時に生じる網膜像のボケを遠視性デフォーカスと呼ぶ。ヒトの場合、正常な調節機能を有していても、一般的に近方作業時には必要調節量よりも調節反応量が少ない状態となる。
このような生理的低調節のことを調節ラグと呼ぶ。調節ラグが生じているときは、対象物からの光は網膜後方に焦点を結ぶ状態となる(長軸化の原因)。言い換えると、調節ラグが生じているときは遠視性デフォーカスが生じることになる。論文によると、近視の児童は正視の児童に比べて調節刺激に対する調節反応量が少ないことを報告し、これが学童期の近視進行の要因のひとつなのではないかと述べている。これは調節ラグが大きいことが近視進行を促す可能性を示唆している。これを調節ラグ理論と呼ぶ。
この理論に基づき調節ラグを軽減する目的で設計された眼鏡に、
累進多焦点眼鏡があるが、これには、医師の正しい所見が必要である。
通常の近視用眼鏡を購入(作製)する場合にも、医師の正しい所見が必要と考えます。
5.について
:紫外線(紫可視光)を適度に浴びる事による、近視抑制効果を発揮するメカニズムとして、
- 近視進行を抑制する遺伝子EGR1(EARLY GROWTH RESPONSE 1)の関与があります。
(簡単にいうと、強膜が強くなり長軸化しにくくなる、という機序です) - 概日リズムと、神経伝達物質の関連性等が指摘されている。詳細は割愛する。